【レポート】TALK 郷土芸能とまちづくり
2019年02月12日 (更新:2016年2月12日)
せんだいメディアテークが進めるプロジェクト「アートノード」のTALKシリーズの一環として、2019年1月23日、みやぎNPOプラザにて、三陸国際芸術祭をテーマとしたトークイベントを開催した。
出演者は、三陸国際芸術祭のプロデューサーである佐東範一さん、(公社)全日本郷土芸能協会の理事・事務局次長で自身も鹿踊(ししおどり)の踊り手である小岩秀太郎さん、宇都宮大学の准教授としてまちづくりについて教鞭をとられている石井大一朗さんの3名で、三陸国際芸術祭を「郷土芸能」と「まちづくり」の視点から語り合った。
左から 佐東範一氏、石井大一朗氏、小岩秀太郎氏
それぞれの自己紹介と活動の紹介、またそこから見える問題定義
まずは、自己紹介代わりに、それぞれの専門分野についてのお話をいただいた。
佐東さんからは、コンテンポラリーダンスについてのお話。コンテンポラリーダンスとは、既存の型にはまらないダンスのあり方であり、一つのジャンルであるというよりはムーブメントであるというお話が印象的だった。
小岩さんからは、自身がなぜ郷土芸能「鹿踊」の伝承者としての道を歩んだのかについてお話しいただき、その魅力についても語っていただいた。そして郷土芸能を世界に広める活動や、後継者不足の問題についても触れていただいた。
また、東北6県は郷土芸能の数が多く、文化財として登録されている郷土芸能だけでも3221種類も存在するという話は驚きだった。(登録されていないものを含めると、それ以上の数になる)
そして、石井さんからは、ご自身の「地域デザインと復興」についての研究から、まちづくりとは、存在する地域の課題を解決することではなく、解決のために議論できる仲間を増やすことだというお話をいただいた。
三陸国際芸術祭を通して考える、これからの社会
佐東さんは、三陸国際芸術祭が始まったきっかけとして「郷土芸能の魅力との出会い」が大きい、とおっしゃっていた。震災で被災地支援に入ったことをきっかけとして、郷土芸能を「芸術」という視点から見はじめるようになったそうだ。
郷土芸能や、芸能の息づく土地の魅力についてたくさんお話しいただいたが、その中でも、都会から三陸国際芸術祭に参加した佐東さんの知人が、自分の住んでいる地域よりお年寄りが大切にされている雰囲気を強く感じたというエピソードは印象深かった。
郷土芸能の世界では高齢者が輝き、尊敬される存在になっているが、人口減少・少子高齢化が全国的に問題となるなかで、そのような社会は理想的な姿ではないかと感じた。
郷土芸能と新しい人(地域)との関わり方
参加者の質疑応答で、その土地に住んでいない「外部の人間」としてどこまで郷土芸能団体と繋がり、関わるべきなのかが難しく、わからないという話があった。確かに、生活を共にする同じ地域で育まれて来た郷土芸能にとって、その関係性はとても近接的で強い印象がある。離れた地で生活する者にとって、その距離感はとても難しいなと気づかされた。
最後に小岩さんから出た話で、郷土芸能に関わる外部の人間にとって、そこが第二の故郷になりえるのかということが、1つの答えになるような気がした。
帰りたい時に帰ることができる心の拠り所としての郷土芸能。関わる外部の人間が多くなることで、そういった悩みも小さくなるのかもしれない。
時間が全く足りないと感じるほど、至福の時間だった。
文章:千田優太(一般社団法人アーツグラウンド東北)
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TALK 「TALK 郷土芸能とまちづくり 〜三陸国際芸術祭から見える未来〜」
2019年1月23日(水) 15:00 – 17:00
入場無料
会場
みやぎNPOプラザ 第2会議室
(宮城県仙台市宮城野区榴ヶ岡5番地)
ゲスト
佐東 範一 三陸国際芸術祭プロデューサー NPO法人JCDN 代表
小岩 秀太郎 (公社)全日本郷土芸能協会 理事・事務局次長
石井 大一朗 宇都宮大学地域デザイン科学部 准教授