【レポート】ワケあり雑がみ部発表 at せんだい資源ナーレ
2018年02月15日 (更新:2018年1月30日)
2018年1月26日〜28日、せんだいメディアテーク1階で開催された「せんだい資源ナーレ」(仙台市環境局主催)において、アーティストの藤浩志さんが部長をつとめる市民参加型の部活「ワケあり雑がみ部」の活動発表を行いました。
2017年11月5日にスタートし、メディアテーク7階で毎週の部活動(造形活動)を重ねた「ワケあり雑がみ部」。会場には、この3ヶ月間の成果を一挙展示! 作品の数々がところせましと並び、さながらマーケットのようなにぎやかさ。その雰囲気に惹きつけられるように多くの方が足を止めてご覧になっていました。
各作品も、藤部長による会場アレンジによって、部室で見るのとはまた違った魅力が引き出されています。
※各作品の写真は、この記事の最後に掲載していますのでぜひご覧ください。
ちなみに、作品は1階のスペースに収まりきらず、7階の部室近辺にも展示。
いまではなくなってしまったお店の紙袋や、テレビ番組のノベルティグッズなど、「レアもの」雑がみのパネルが中心です。
懐かしい、珍しい雑がみの数々に、立ち止まってご覧になる方が大勢いらっしゃいました。
1階にモノを運んでちょっとすっきりした部室も公開。きれいになったような、寂しいような。
———————-
さて、展示中も「部活動」は続行。
会場内にもうけた制作ブースで新しい作品づくりに取り掛かる部員のみなさん。創作意欲はとどまることを知りません。
お客さんの中には、その場で入部を希望される方もいて、「ベテラン部員」に指導を受けながら、あるいは自分なりの方法で作品制作。
展示会場に、つぎつぎと新しい作品が追加されていきます。
11月の新入部員はいつのまにか教える側になり、まるで上級生が1年生を指導する「本当の部活」のよう。
数ヶ月間、一緒に活動するなかでお互いの作品にも詳しくなり、他の部員の作品をお客さんに解説する方も。
部活としての一体感も最高潮です。展示中も、ワイワイと部活の輪は広がっていきます。
雑がみ部の藤浩志部長は恐竜型の作品の公開制作を行いました。
紙袋をクルクル丸めたものを素材に、恐竜が徐々にその姿を表していきます。
お客さんも興味しんしん。
最終的に、首のながい恐竜と、ティラノサウルスのような2足歩行の恐竜が完成。紙でできたとは思えない迫力。
———————–
展示中には、この部活動を振り返るイベントも開催。
振り返り会では、藤さんを含めた3人を進行役として、作品で工夫したこと、部活を通して感じたことなどを、部員の方々からお話しいただきました。作るだけではない部員同士の交流の楽しさ、一人で制作していたら実現できなかったことなどさまざまなエピソードが飛び出す充実した時間となりました。
———————-
ちなみに「せんだい資源ナーレ」の期間中も、雑がみ収集は続行。
展示期間中も、たくさんのお持ち込みをいただきました。ありがとうございました!
———————-
「部室に集まって、それぞれが作りたいものを作る」。
これが「ワケあり雑がみ部」の唯一といっても良いルールでした。
部長の藤さんは、「たくさん材料がある環境を整え、そこで何かをつくりたいと思っている人が活動する。それが雑がみ部でやりたかったこと」と語ります。そのコンセプトから生まれたこのルールは、シンプルさゆえに、部員を創作に夢中にさせ、お互いの交流を生み出していきました。
毎週の部活で起こっていることも、外からみれば実にシンプル。各人が自分の作品をひたすら制作し、休憩時間にはみんなで集まって雑談する、その繰り返しです。ですが、それがいつの間にかお互いに影響を与え、ひとりでは生み出せなかったモノと場を生み出してきました。
「制作しているモノだけでなく、『つくろうとする態度』がお互いに影響を与えていく」という藤さんの言葉は、雑がみ部の有り様を端的に表したものでした。10人以上が活動する日でも、作品に集中しているので一声も聞こえないことがしばしばでしたが、制作に向かう「態度」を通して、お互いにコミュニケーションし続けていたとも言えます。
その、見えないコミュニケーション、そこから生まれる「楽しさ」が、この部活をじわじわと活性化させた原動力だったのだと思います。
そして、もちろん、大量の雑がみを市民のみなさんからご提供いただいたことが、この部活を活性化させました。
毎週のように持ち込まれる、色も形もさまざまな雑がみの数々。
日々見かけるお菓子の空き箱、他県のお土産の包装紙、自分では買わない商品の袋、、、。
その中から、好きな材料を好きなだけ選べる。そんな豊かな環境を作ることができたのは、ご提供いただいたみなさまのおかげです。
多種多様な雑がみは、モノを見る目も変えました。
家でみればただの「雑がみ」、ひょっとすると「紙のゴミ」になっていたかもしれないものが、「材料」として眺め直せば、何かに活かせる「資源」になる。
そこには、工夫が凝らされたデザインがあり、まだまだ使える丈夫さがあり、そして何より、捨ててしまうのは惜しいもったいなさがありました。雑がみの中には、数十年保管されていたものもありましたが、その方の「もったいない」という思いも一緒に受け取った気持ちになり、大切に使おうと心が引き締まるようでした。
部員はもちろんのこと、作品をご覧いただいた方にも、「資源」として雑がみを見る気持ちを共有していただけたのではないかと思っています。
———————-
この「せんだい資源ナーレ」の展示をもって、「ワケあり雑がみ部」の活動は完了となりました。
「活動をつくりたい」と語る藤さんが企画したこの「雑がみ部」は、当初のコンセプトからずれることなく、3ヶ月間走り抜けました。「雑がみ」や「資源」について、あるいは、「人が集まって活動すること」について考えていくための「種」のようなものを残せたのではないかと思っています。
部活は終わってしまいますが、それぞれの生活の中で、部活で生まれた「種」から芽が出ることを楽しみにしています。
ご参加、ご協力いただいたみなさま、本当にありがとうございました!!
———————-
さて、ここからは展示された部員の作品をご紹介します。
全部はご紹介できないのですが、その工夫とアイデアの数々をぜひご覧ください!
ちびっこによる作品。「びっくり箱」だそうですよ。
電車の形をしたモナカの箱を使った連作。箱などを家などに見立てて風景を浮かび上がらせています。
フーセンガムを積み上げたランタンの作品。
背をとじる紐に色とりどりの紙袋の取っ手をつかったノート。
花柄やカステラの包装紙などを使った、花のような折り紙作品。
三越の紙袋を使用したバッグ。模様を切り出して効果的に使っています。
今年は戌年なので、お菓子箱による犬。金の屏風や箱の金銀が効いています。
ポストカードを組み合わせた華やかな花。
お酒の包み紙を使って、酒造に吊るす杉玉と酒瓶を制作。
雑がみでつくった「みの虫」。「みの虫がもし雑がみ部部員だったら」というコンセプト。
五角形を組み合わせた幾何学的な美しさのある作品。
ほぼティッシュ箱だけで制作されたカモシカ。資源ナーレの入り口でお客さんをお出迎えしました。
鳥のマスク。お子さんがかぶるために制作。色彩も紙のテクスチャも凝っています。
丸い形を連続させたシート。時の流れを水の流れに見立てて表現したそう。
「フラワーチャット」というタイトルで、花柄の雑がみをタペストリーに。
紙袋の取っ手を、花に仕立てた作品。
雑がみをうちわに仕立てた「ありそうで実在しない団扇」
入れ子状につぎつぎ違った箱が出てくる作品。手が込んでいます。
12月17日に来館したパッケージクラフト作家の高橋和真さんが創作したロボット作品を、独自に発展させたロボットシリーズ。
包装紙を折り紙にして制作された「不死鳥」。折りのテクスチャと包装紙の色で華やかな作品。
雑がみを切り抜いて作ったポチ袋。それぞれ違った動物や植物が登場してきます。
写真ではわかりづらいのですが、パッケージを刺繍でなぞった作品。左のチョコが刺繍されています。
ティッシュ箱から雑がみが出てくるという、リサイクルを想起させる作品。
こちらはトイレットペーパー状に仕上げられた雑がみ。ストーリーがあるそうです。
ティッシュ箱など紙箱を、花器にした作品。意外な取り合わせで目を引いていました。
こちらは紙でできたアクセサリー。紙でできたとは思えない仕上がりで女性に人気でした。
こちらは建築的な作品。切り抜いた窓から覗くと、キラキラしたモビールを楽しめます。
こちらは同じチョコシリーズの裏面を使用した作品。
クラフト紙の風合いを生かしたポストや卵型の作品。
人気者も登場!こどもたちに人気でした。
折り紙で折ったバラと箱を組み合わせた作品。
ユニット折り紙による6面体のシリーズ。
同種の紙袋を使った赤いクリスマスツリー。
小学生の部員を中心に、みんなで力を合わせて作った作品。
コーヒーの箱でマグカップを作っています。
3種の違った紙袋を使ったユニット折り紙。
祭壇のような雰囲気のある作品。の手前に、雑がみで制作されたライオン。神殿のようですね。
雑がみを表紙にしたノートのシリーズ。1冊ごとに工夫がこらされています。
写真だとわかりづらいのですが、紙袋に丸みを取り入れた造形的作品。
紙袋を画面にして作ったコラージュ。色彩が目を引きます。
宇宙をイメージして制作されたコラージュ作品。折り鶴などを貼って立体的な部分も。
同種の紙袋を破いて作られたシリーズ。お花は紙袋の取っ手をほぐして制作するなど、紙袋の可能性を追求しています。
こちらも同種の紙袋。2個をつかって1個の大きな紙袋を作ったり、連続させてみたり。
こちらは、猫のエサの箱による作品。エンドレスに猫が登場!
金色の雑がみを使った、「金色のお弁当!」
積む、丸める、吊るすなど、多様な技法を駆使したテント。
白い袋で作られたツリー。はさみを入れて繊細な雰囲気。
ティッシュ箱で作られた、写真撮影用フレーム。
一人の部員さんを中心に、みんなで合作したドレス。ヒールやバッグも雑がみ製。
1月14日に開催したワークショップ「コラージュオノマトペ」の作品たち。
(イベントレポートはこちら。作品写真がご覧いただけます)
いまはないお店の紙袋などを中心に構成されたパネル作品。貴重な資料の数々です。
パッケージの文字に着目した作品。
————————
※展示終了後、作品の一部や、作品に使用しなかった雑がみは、資源回収トラックに回収していただきました。
トラック満載の量となった雑がみはリサイクルへとまわり、資源として循環します。
雑がみのご提供、本当にありがとうございました!
写真撮影:渡邊博一(※最後のトラック写真のみスタッフ撮影)