【レポート】ふたりの写真家「記録と記憶・語り始める風景」
2019年12月20日 (更新:2019年12月20日)
トークの会期を挟んで同時開催したふたりの写真展を見ていると、人々の生活とその空間を丸ごと記録しようとする徳朗に対し、
隆二は記憶を基にストーリーを仕立て、演出を加えて制作する、一見すると現実から遠く離れたファンタジーとも言える写真である。
初めは全く違った表現として見えていた両者の写真は、トークによって源流は同じであることに気づく。
終戦から8年後に写真を撮り始めた兄と、それを追いかけて写真を撮り始めた弟の共通した対象は、市井の人々とその暮らしのなかで出来上がっていった風景だったと思う。
そして、二人の人の営みに対するまなざしの根底にあるのは、戦争と戦後という共通体験を前提とした意識であり、当然の帰結だったようにも思われる。
震災後8年という偶然の年に得た、一点一点丁寧に写真について語る両者との時間は、震災体験という、
おそらくそれは前提して共有する多くの来場者に対し、少しの答えと、手がかりや希望を残したのではないかと思う。
文章:小岩勉(写真家)
◉トークの様子は下記からご覧いただけます。
【せんだいメディアテーク・オンライン】TALK ふたりの写真家「記録と記憶・語りはじめる風景」