【レポート】千年のしらべ 瑞巌寺・埋木書院一日鑑賞会
2018年10月17日 (更新:2018年10月17日)
瑞巌寺の約10年に及ぶ「平成の大修理」完了を記念し、「千年のしらべ 瑞巌寺・埋木書院一日鑑賞会」を行いました。
平成30年8月26日(日)当日、松島は雨で、しっとりと落ち着いた雰囲気のなかでの見学会となりました。
「千年のしらべ」第一部は埋木書院を見学、第二部は埋木についてのトークと埋木製弦楽器の演奏です。
見学会は、時間ごとに20人ほどのグループに分かれて行われました。
普段一般には公開していない場所ということもあり、みなさん少し緊張した様子で書院への渡り廊下を歩いていきました。
今回特別公開された「埋木書院」は、「八木山」の地名でも知られる仙台の資産家八木久兵衛氏が、明治22年に北上川から引きあげられた直径約1.5m、長さ約30mの巨大な川埋木を小割せず、できるだけ大きなまま用いて明治41年に建設した木造平屋家です。
「埋木」とは、長く地中に埋もれた樹木のことで、数百万年埋もれ炭化した「山埋木」(仙台埋木細工の原料)と、数百~数千年腐らずに水没していた「川埋木」の2種類があります。藤原定家が詠んだ歌に川埋木が登場しますが(「名取川春の日数は顕れて花にぞ沈む瀬々の埋もれ木」)、はるか昔から希少・貴重なものとして全国に知られていました。埋木書院の天井板、柱、長押は一枚板でできており、敷居から戸障子の桟に到るまで一本の欅からつくられています。
川の埋木は長く埋もれていたことで、同種材よりも深く濃い独特の色あいをもちます。書院欄間の桐と鳳凰の両面透かし彫りや、ゆらぎある当時のガラスなど、大変貴重な装飾を見ることができます。
参加者は説明を聞きながら、その造形の美しさや歴史の深さを体験しました。
「第二部トークと演奏」は会場を移して行われました。堀野 宗俊さん(瑞巌寺宝物館顧問、葦航寺住職)、松浦 丹次郎さん(埋木研究者)、伊達 伸明さん(美術家)の3名によるトークと、伊達さんが制作した埋木製弦楽器「ウモレレ」の演奏会です。
今回、瑞巌寺宝物館から、埋木に関する資料を特別に展示していただきました。
また、松浦丹次郎さんが阿武隈川の埋木で製作した木箱やカスタネットなどを展示しました。
まずはじめに堀野宗俊さんが、松島の歴史や埋木書院が瑞巌寺に移設された経緯などについて、お話されました。
次に、埋木研究者の松浦さんから、埋木の素材の魅力や、文献にどう埋木が登場してきたか、日本各地で取引されていたことなど、埋木の歴史についてお話してくださいました。
次に、伊達伸明さんが、これまで埋木について取り組んでこられたプロジェクト(亜炭香古学)についてお話しされ、そのプロジェクトの成果として、ご自身で制作された埋木製ウクレレ「ウモレレ」を演奏しました。
最後は3名が壇上にあがり、埋木についてのよもやま話。見学時に参加者から出された質問を紹介しながらそれに回答していきました。3者それぞれの埋木書院に対する思いについてもお話しされました。
伊達さんは「千年のしらべ」を企画した心情について、「『千年のしらべ』というタイトルには、千年を超える木のドラマを調べたい、またそこから作った楽器の音色(調べ)も聴いてみたい、というふたつの思いを込めました。埋木職人も減り、このままだと埋木という存在自体が埋もれてしまうかもしれない今だからこそ、埋木書院はさまざまな歴史のページをめくってくれる重要な資産だと思います」と語りました。
目を凝らせば、実は今でも私たちの足元に片鱗が眠る「地つづきの歴史素材」。埋木を通してみることで、現代の風景のなかに、いにしえの雅が感じられるようになるといいですね。
※レポートは、JOURNAL4号にも掲載されています。JOURNAL4号は平成30年10月からメディアテーク館内で配布しています。