【レポート】TALK バイオをハックする?
2017年12月16日 (更新:2017年12月16日)
2017年11月26日、青葉区片平のART SPACE YOUTOを会場に、『バイオをハックする?』と題したトークイベントを開催した。
今回のゲストは、現在“バイオ(生物学)”をベースとしたハック・アートプロジェクトに取り組む西原由実さん。元々はインタラクションデザインを中心としたリサーチに取り組んでいたが、2年前に“バイオ“の世界に送り込まれたのだという。
西原由実さん〈左〉、大網拓真(FabLab SENDAI – FLAT)〈右〉
まずはじめに述べられたのが、“バイオハッカー(Bio Hackers)”のあり方について。これまでバイオに関する様々なプロジェクトは、大学や企業の研究室という閉ざされた場を中心に取り組まれてきた。しかしながら、近年リサーチに必要な道具のオープンソース化や低価格化が進められてきたことで、特定の機関に所属していない野生の“バイオハッカー”が現れ始めている。
“ハッカー”という言葉を聞くと、情報操作や窃盗に勤しんでいる人間などといったネガティブなイメージを思い浮かべる人も多いだろう。しかしながら多くの“バイオハッカー”たちは、自身の取り組むプロジェクトやリサーチ、ひいてはその手法について事細かに説明をしてくれるオープンさを持っている。西原さん自身も、あるバイオアーティストから、培養のテクニックだけではなく彼が育てていた粘菌をも譲り受けたことがあるという。
他のバイオアーティストから譲り受け、オートミールを用いて培養された粘菌
トーク中には、ガラスの実験用容器に入れられた実物の粘菌や夜光虫を見せてくれた西原さん。しかしそれらはほんの一例で、世界のアーティストが生み出した作品のなかには、目視可能なものだけではなく、大腸菌や酵母などといった普段は目にすることのない微生物をベースにしたものもあり、参加者からは驚きの声が上がっていた。
トーク終盤には、参加者より「この活動を通じて、何か達成したい目的や目標はあるか」という質問が。これに対し、「今はとにかく「こうしたらどうなるんだろう?」という興味や楽しみが原動力となっている。どんな結果にむすびつくかはまだ見えていないが、手を動かしながら考え、見つけていきたいと思う。」と西原さんは言う。
今回のトークにおける重要な観点のひとつに、“誰でも”バイオにアクセスが可能となってきたということが挙げられる。この動向がもたらしたものとして、誰もがバイオを用いて何かを生みだせるということ以上に、自分にとって身近な菌や生物についての知見を深め、日常生活をより多角的に見ることができるようになるということが大きな収穫であると言えよう。
知的好奇心を満たすためのリサーチ・創作活動の可能性について、非常に深く考えさせられ、背中を押された一時間であった。
文章:大網 拓真・小野寺志乃(FabLab SENDAI – FLAT 、本トーク企画者)
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TALK バイオをハックする?
2017年11月26日(日)16:00~17:30
話し手 西原 由実 (リサーチャー)
聞き手 大網 拓真(FabLab SENDAI – FLAT エンジニア)
会場:ART SPACE YOUTO ( 1to2 BLDG. 内)