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【レポート】仙台から考える水俣のこと、能登のこと

2025年06月03日 (更新:2025年6月3日)

TALK「仙台から考える水俣のこと、能登のこと」は、森田具海写真展「ここで眺める、水俣 そして能登」の会場のひとつ、bookcafé火星の庭にて開催された。京都出身で、東京芸術大学大学院で学んだ森田は、2019年に大学院を修了した数日後に水俣へと移住した。そのような経歴をもつ森田が、東北との関わりを話すことからこの度のトークは始まった。

森田は「土地と協働しながら記録をつくる」組織NOOK(のおく)が2018年に東北沿岸部で行った聞き取りに同行し、写真撮影を行っている。「その窓から何が見えていましたか?」などの問いかけから語りを集めた本企画は、「とある窓」と題された展覧会として、仙台とともに東京でも公開された。

東北での聞き取りは、森田にとって転機となったという。書籍だけでなく人の話を聞きたいと水俣に通い直し、移住するに至る。2024年に刊行された森田にとって初めてとなる写真集『ここで眺める水俣 あとから来る者たちの場所』は、人物が被写体となった写真はきわめて少ない。しかしながら、本書に収録された水俣や周辺地域の風景について森田が話すと、その風景を森田に教えた人々の声や、そこで交わされた会話が聞こえてくるように感じられた。

歴史社会学者の山内明美は、森田の写真をふまえ、水俣の経験と東北の経験、変えられてしまった景観をふれあわせる視座を示した。山内からモノクロとカラーの写真が介在することについて問われた森田は、色調の操作と「注意深く見る経験」の関係を語った。

「ここで眺める、水俣 そして能登」展は、石巻 まちの本棚でも開催されている。トーク当日、森田とわたしは、石巻 まちの本棚ディレクターで建築家の勝邦義の案内のもと、牡鹿半島に足を運んだ。石巻と仙台の距離感は、2024年9月、そして2025年3月に森田が撮影した能登の写真を介して、能登と金沢の距離感とも重ねられた。

「仙台から考える水俣のこと、能登のこと」。それぞれの場所で起きたこと、起こっていることを単純に接続して差異化するのではなく、森田の語りを通じて、その地に生きる人々の話に耳をかたむけることの切実さが場に開かれるような時間であった。

文章:小田原のどか(企画)

 

◉トークイベントの映像は、以下のYouTubeチャンネルにて公開予定です。

せんだいメディアテーク・オンライン

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イベント

水俣を拠点に活動する森田具海(写真家)と山内明美(歴史社会学/宮城教育大学教員)によるトーク。司会:小田原のどか(彫刻家・評論家/横浜国立大学教員)、場所:book cafe 火星の庭、要予約