【レポート】TALK Hideyuki Katsumata × 古川 貴司 公開制作&トーク
2019年04月01日 (更新:2019年4月1日)
せんだいメディアテークが進めるプロジェクト「アートノード」のTALKシリーズのひとつとして行った「公開制作」。
アーティスト カツマタヒデユキ氏、ZIGAMEprinting 古川貴司氏の二名をお招きし、シルクスクリーンとライブペイントを複合させた公開制作とトークイベントを行いました。
今回のゲストであるカツマタ氏は主に海外へ向けたイラストレーションの展開を行うアーティストで、
古川氏は東京町田でシルクスクリーン工房『ZIGAME printing』を運営しています。
会場は若林区六丁の目にあるanalog。
製本を母体に、シルクスクリーン印刷、箔押し加工、レーザー加工など、印刷に関する割と特殊な加工を得意とするレンタルスタジオです。
analogでは製作を依頼する他に、自分でスタジオを借りて作業をすることも可能となっています。
そんな場所ならではの「アーティストの持つコンテンツ」と「専門的な版画技術」を織り交ぜつつ実験を行うというのが今回のテーマ。
実は今回のイベントの準備段階として、既にSNS上で公開制作を行っていました。
イベント決定後の打ち合わせ段階からゲストのお二人との認識のなかで、analogで第一に『実験』を重要なテーマとして進めており、当日使用する規格外の製版(3×6判)の製作工程や、当日販売を行うためのプロダクトの製作過程など、Instagramを通して発信していました。
3×6判制作映像1(約20秒)
3×6判制作映像2(約20秒)
さて、当日のレポートに戻りましょう。
この日は天候にも恵まれ、analogのガレージをオープンにした状態でスタート。
Oval coffee standさんにもご協力をいただき、さまざまな人達にお越しいただきました。
カツマタ氏によるライブペイント、古川氏によるライブプリントで少しずつキャンバスに色彩が加わっていきます。
思いつくままに自由にお絵かきをしているおじさん達を羨ましそうに眺めている女の子。
観覧者の方々にもペイントやプリントにて作品制作に参加協力していただきました。
約3時間半の自由時間の後、ある程度キャンバスが色彩を帯びてきたところで、SNSにて公開製作を行っていた3×6判サイズの巨大な版が登場。
いよいよクライマックスといった空気の中、こちらの巨大版を古川氏の一撃で摺り下ろし。
場内の緊張感を解く歓声と拍手に包まれると思いきや、版をあげてみると我々3人が共有していたイメージとは違う仕上がりになっていました。
観覧者の方々にも感動は伝わらなかったようで、なんともいえない空気に。
誰もが口火を切りづらい状況の中、お二人の咄嗟の判断のもと、ローラーで修正を加えることに。
しかしこのような状況判断や対応力というのがライブの醍醐味でもあります。
ここまでで当日の公開制作は終了。その後トークへと移ります。
トークではお二人のこれまでの実績や、現在の活動について伺いました。
まずはシルクスクリーン版画の市場について。
古川氏の版画工房では主に海外の作品展に出展するためのアーティストサポートを行っていて、例えば音楽のジャンルでは有名無名問わずファンアートのような形で製作された版画を取引するような絵画のシーンがあるとのこと。
そのような形で音楽以外にもグラフィックデザインでのシルクスクリーンなど、一部のマニアが市場を形成しているという話から、現代の技術的には淘汰されているはずのシルクスクリーンのような技法でもファンアートという文化で需要があるとのこと。
また、カツマタ氏は自身の活動が海外へ進出するきっかけとして、MYSPACEを運用していた時代に自身が作った映像作品を当時無名であったスウェーデンのバンドLittle Dragonが採用。
その後、Little Dragonが爆発的に有名になったことで仕事のきっかけが次々に生まれていったと話します。
現在は南米からアジア、ヨーロッパまで活動範囲を拡げているとのこと。
確かに運は大事な要素であると感じつつも、この日は運以外のきっかけを伺いたかったのが正直なところ。
しかしこのような姿勢で、さも『運』に恵まれたからと言った物言いがカツマタ氏らしいという印象を受けました。
なぜなら当日のトークでもフォローしましたが、企画を開始してから3ヶ月後に、カツマタ氏の海外出張に同行したのですが、現地で彼が人を寄せ付けるポジティブな姿勢を常に感じていたからです。
それは常に「何かのきっかけに繋がるように」心がけているといったようなもの。
実のところそれは、今回古川氏からカツマタ氏を紹介いただいたことにも繋がります。古川氏においても、同じようにそのような人との関わりを大事にするといった印象がありました。
外へ向けた活動が必ずしも正しいというわけではありませんが、トークで伺いたかった関心ごとの本質はここにあるような気がします。
ということで、私の稚拙な司会進行でトークにおいて引き出せなかった分、私なりの解釈を加え、まとめとします。
トークに参加いただいた方々がどのような印象を持たれていたのか気になるところでもあります。
さて、このような形でイベントは終了となりましたが、翌日もゲストのお二人と共にanalogに篭り作品の仕上げを行いました。
アイディアを出し合いながら新たに版を焼き、更に版を重ねていきます。
analogに転がっていた箔押しペンでそれぞれのサインを加えて完成!
カツマタヒデユキ×古川貴司×analog製
作品名は特に決まっておりませんが、
カツマタ氏が常々「性におおらかな町仙台」とこぼしていました。
レポートは以上です!
文章:菊地充洋(analog)
ゲスト
古川 貴司(ZIGAME TOKYO)
会場 analog