【レポート】TALK 「台湾インディペンデントシーン、進化するリトルプレス」
2017年09月07日 (更新:2017年9月7日)
トークイベント「台湾のインディペンデントシーン、進化するリトルプレス」は、台湾と東京からゲスト4人を迎えておこないました。
近年、台湾では新しい本屋がつぎつぎとオープンし注目されています。同時にたくさんのアートブック、zine(ジン/イラストや詩、漫画などの表現を紙質や形にこだわり、簡易な冊子にしたもの。少部数出版)がつくられています。これまでにないアイディアやユニークな手法が、どんな人達によってどのような制作環境のもと編み出されているのか。その流通を担う書店の盛り上がりにはどんな背景があり、どのようなお店があるのかなど、おもに独立書店と呼ばれる個人店、インディペンデント(大量流通ではない)の出版物と作家達にフォーカスして語っていただきました。
トークは2部に分かれておこなわれました。
前半は、台湾・高雄市「三餘書店」の書店員・陳瑩羽さん(日本名なお/台湾では本名の他に英語名や日本語名の通称を持つ人が多い)が、台湾南部の都市・高雄にあるさまざまな独立書店を多数の写真とともに紹介しました。なおさんは、大学では日本語を専攻して日本文学の愛読者であること、数年前にワーキングホリデイで東北在住の経験があることなどから、日本語が堪能です。
「book cafe 火星の庭」の前野久美子が聞き手をつとめ、台湾の小さな本屋の開業ラッシュの実情について、具体的に話していただきました。台湾では個人経営の書店を独立書店と呼びますが、その数が1800店あるというのに驚きました。台湾の大きさは九州とほぼ同じくらいということを考えるとものすごい数です。ただ日本の「本屋」とはイメージが違うところもあり、私設図書室、貸本などがメインの、本を買う+αなところも多い。なおさんが働く三餘書店は、歴史学者、建築家、デザイナーなど本業を別に持つ四人の共同経営というスタイルです。「高雄にはもともとアートや本が好きな人が集まる場所がなかったから、そういう場所をつくりたいという気持ちがある」との言葉にあるように、人や情報が集まる場作りにより重きをおいていて、出版や地域コニュミティーの拠点になっている。本屋に対する発想は、日本よりもフットワークが軽く、自由で幅広いと感じました。
後半は、台湾で活躍するイラストレーター永岡裕介さん、東京・タコシェの店長、中山亜弓さんが出演、東京・ポポタムの店長、大林えり子さんの進行のもとおこないました。
タコシェ、ポポタムは台湾発のzinの取扱いも多く、今回火星の庭で陳列販売している台湾のzinは全て御二方のセレクトによるものです。中山さん、大林さんは台湾の小規模な出版物、zin、リトルプレスの魅力を語っていただき、取引のある台北のブックカフェ「mangasick」との交流についてなどを例にあげられていました。永岡さんは、台湾で活動するイラストレーターならではの視点から、台湾の若い世代を中心としたイラストレーター、クリエイターの方々や、彼らの作る場、店の数々について、配布資料や、スライド映写を多数用いて、ライブ感あふれるレポートを聞かせていただきました。台湾は1987年に戒厳令による表現規制が解かれてからまだ30年。今まで封印されてきた個人の表現が一気に噴き出しているような熱を感じます。そして、二国間を行き来する永岡さんの活動を伺っていると、今後はアジア圏で発表したり、イベントしたりということがますます多くなっていくのではないかと感じました。
会場には予想を大きく上回るたくさんのお客様にご来場いただき、3時間に及ぶ充実したトークとなりました。参加者には台湾、韓国出身の人達もいらして、終了後しばらく歓談が続き活発な交流も見られ、台湾のアートやカルチャーへの関心の高さを感じる時間になりました。
また今回は、同時期にメディアテーク内にあるカネイリミュージアムショップ6、クレプスキュールカフェ、火星の庭との3店合同で「喜歓!台湾和定禅寺」という台湾フェアを開催。その一環として、火星の庭では「HOLIDAY DANCE 禮拜日的舞會」展をおこない、台北で活躍する台湾、香港、日本出身のイラストレーターの作品展と台湾のリトルプレスの展示販売をおこないました。仙台ではまだ少ない台湾関連のイベントが広がりのある形で行えたこと、そのなかでアートノードTALKができたことも意義のあることだったと思います。ご協力いただいたカネイリさん、クレプスキュールカフェさんにも感謝申しあげます。
レポート:前野久美子(book cafe 火星の庭)※本イベント企画者
———————————————————————
2017年8月27日(日) 18:30~20:30(開場18:00)
会場:book cafe 火星の庭(宮城県仙台市青葉区本町1-14-30)
出演:永岡裕介(イラストレーター)
陳瑩羽(三餘書店)
中山亜弓(書店タコシェ)
聞き手:大林えり子(ブックギャラリーポポタム店主)