【レポート】こどもアートひろば 展覧会 アッペトッペ=オガル・カタカナシ記念公園
2017年03月31日 (更新:2017年3月31日)
KOSUGE1-16の展覧会「アッペトッペ=オガル・カタカナシ記念公園」のテーマとなった人物のひとり、天江富弥。
天江は、仙台七夕や河童(かっぱ)祭り、仙台仲見世(なかみせ)、郷土弁句会など、仙台の様々な文化を継承する中心となった人物でした。富弥が発行した『炉盞(ろさん)』、『盞々抄(さんさんしょう)』という印刷物には、様々な切り口で仙台を紹介する観光案内地図が掲載され、郷土自慢の食文化、民芸、富弥が経営する居酒屋「炉ばた」での年中行事(祭り)などが紹介されています。
これら文献から知ることのできる多彩で活き活きとした動きに着想を得てKOSUGE1-16が企画した本展イベントについて、ご紹介します。
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2016.12.17 「外国絵本のおはなし会」(公益財団法人 仙台観光国際協会)
スズキヘキと天江富弥が仙台・宮城の言葉や文化にこだわって活動を行ったことから、世界各国それぞれの言葉で語ってもらうおはなし会を開催しました。
大正時代に創刊した児童雑誌『赤い鳥』が中央の文化をスタンダードにしていたことに対し、ヘキと富弥が生み出した雑誌『おてんとさん』は地元の作品を積極的に掲載し、中央を通さない地方同士の文化交流を促進するとともに、子どもたちのまっすぐな表現をひきだす郷土の言葉(方言)を大切にしていた活動といえるでしょう。 「外国絵本のおはなし会」は、この「おてんとさん」の動きになぞらえて実施しました。
仙台に暮らす外国人の方々にご協力いただき、ベトナム、中国、韓国、イタリアなど、世界の様々な言語の響きや絵本の魅力をお楽しみいただきました。
企画:公益財団法人 仙台観光国際協会
2016.12.18 ~こけしが語る宮城の民話~ こけしぼっこのこけし劇(こけしぼっこ)
仙台を拠点に活動する「こけし劇」を上演するグループ、こけしぼっこ。
「こけし劇」とは、さまざまな地域で作られたこけしたちが、人形劇のように舞台の上で活躍する劇です。
富弥は大正14年に郷土玩具店「小芥子洞(こけしどう)」を仙台の文化横丁に開業、昭和3年にこけしを体系的に扱った日本初の文献『こけし這子(ほうこ)の話』を上梓して、それまで東北のみで知られる玩具だった「こけし」を全国的に著名な民芸品に押し上げました。 そんな富弥への敬意をこめて、今回、KOSUGE1-16が富弥とヘキのこけしを制作、人形劇グループ「こけしぼっこ」が新作のこけし劇を上演しました。
今回、KOSUGE1-16はスズキヘキと天江富弥のこけしを制作し、そのこけしが出演する新作も披露していただきました。
左より、スズキヘキのご子息の鈴木楫吉さん、こけしぼっこの4名、KOSUGE1-16の土谷享。
2016.12.18 ワークショップ 「ホヤちょうちんのお出迎え」(アーティスト 磯崎道佳)
『炉盞(ろさん)』、『盞々抄(さんさんしょう)』に「ほやの育成過程」の絵を何度も描き、生物学・食文化の両面から解説・紹介した天江富弥。居酒屋では、ほやを食べた人を称え下記のような賞状を渡していました。
「食通賞 ○○○○○○殿 あなたは○月○日初めて脊索動物 海鞘(ほや)を試食せられ その独特の魔味を理解し愛食 これぞ天下無双の珍味なりと絶賛せられました あなたは正に味覚の大通であります 依って賞状を呈します 昭和○年○月○日 日本珍味探究会 会長 天江富弥 仙台炉ばた内」
本展では富弥がこよなく愛した「ほや」をモチーフに、アーティストの磯崎道佳が展示やワークショップを行いました。
展示会場は、仙台市営地下鉄の駅。電車が通るたびに、通気口から風が吹き出してきます。
電車の到着に合わせて空気で膨らむオレンジ色のホヤちょうちんを作りました。
【会期中設置】 ホヤソファーとカウチタンコロリン(アーティスト 磯崎道佳)
ホヤの形をしたソファーと、柿をイメージしたテーブルでくつろげる空間。コロコロ昼寝するも良し、コーヒーを飲むのも良しの空間です。
◎ワークショップ オテントサンサンお花パッチワーク
「ホヤソファー」にお花のパッチワークをするワークショプ。 スズキヘキの童謡「オテントサン アリガトウ」のイメージでお花のパッチワークをしました。
2016.12.23 ワークショップ 「おがる彫」(アーティスト タノタイガ)
古くから子孫繁栄・商売繁盛のご神体として男根型木像を祭る習わしがありました。天江富弥は、かつて正月5日に、居酒屋で「おがる祭」を実施し、男根型木像を作って仙台近郊の道祖神社(どうそじんじゃ)等に奉納していました。店にお酒を呑みに来たお客がノミを入れ(彫り)、その木屑もお守りとして大切に持ち帰ったそうです。
古くからある習わしを再評価し、天江富弥独特のユーモアを加えたところに感銘をうけ、アーティストのタノタイガの解釈によるおがる講を実施しました。
このワークショップでは、香木を素材に小刀でご神体を彫り、ウィンナーコーヒーをのみながら天江富弥が行っていた「おがる講」について学びました。今回彫ったおがる彫は、天江富弥が収集した道祖神も多く奉られている福聚院(ふくじゅいん)への奉納を行いました。
2016.12.23 カタカナシ記念トーク
KOSUGE1-16 土谷享氏が今回の作品とその制作プロセスなどについて、スタッフやアーティストを交えて語りました。
2016.12.25 プレジャーマーケット@カタカナシ記念公園
「おてんとさん社」若手メンバーで結成されたグループ、「七ツの子社」のメンバーが行った最大の活動が、昭和2年から始まった「伊勢堂山林間学校」です。当時一般的ではなかった夏休みの林間学校を毎年開催し、普及させました。
その林間学校が、音楽会や影絵上演などバラエティに富んだカリキュラムで構成され、多様な講師陣が参加していたことに着想を得て、市内のクリエイティブな人々が集って活動を展開している「プレジャーマーケット」を開催しました。
国際センター駅2階でのマーケットの他、追廻地区で乗馬体験を行う「オイマワシノオウマサン」なども開催しました。
■「プレジャーマーケット」とは
東西線が開業して中心部から広瀬川までわずか3分、美術館・博物館・植物園やコンベンション施設が集まるエリアのどまんなかにある、360度を緑に囲まれた国際センター駅・青葉の風テラス。ここは誰もが自然・風景や人の営みに触れられ、日々の暮らしに豊かさをもたらしてくれる場所です。 コーヒー・焼き菓子を傍らにハンモックで佇む、ものづくりが得意な人に教わりながら創作する、テラスを飛び出して街歩きする...ここでしか得られない感動的な体験プログラム=コトに焦点を当て、自分たちが楽しむことを何より大切にする人たちと、月の終わりの日曜日にプレジャーマーケットをひらいています。
企画:特定非営利活動法人都市デザインワークス
2016.12.25 ハナカタマサキライブ
音楽家ハナカタマサキ氏が、自身のバンドを率いて、スズキヘキの曲をアレンジした童謡コンサートを開催しました。
大村太一郎(コントラバス、ウクレレ)、北添紫光(トイドラム)、大村菜穂子(メロディオン、グロッケン.etc)とのカルテット編成での演奏。いくつかの曲では、おてんとさんの会の方も合唱で参加されました。
写真:渡邊博一
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こどもアートひろば 展覧会 アーティスト KOSUGE1-16
アッペトッペ=オガル・カタカナシ記念公園
http://artnode.smt.jp/katakanashi.html
企画制作 KOSUGE1-16(アーティストユニット)
参加アーティスト
磯崎道佳(いそざき みちよし)アーティスト
イトウユウコ(布物作家)
こけしぼっこ(人形劇グループ)
タノタイガ(美術家)
ハナカタマサキ(ミュージシャン/アニメ映像作家)
日 時:2016年12月15日(木)〜26日(月) ※会期中無休 10時〜19時(26日のみ17時終了)
会 場:地下鉄東西線 国際センター駅 2階青葉の風テラス
主 催:せんだいメディアテーク(公益財団法人 仙台市市民文化事業団)
助 成:「SOMPO アート・ファンド」(企業メセナ協議会 2021 Arts Fund)
協 力:青葉山コンソーシアム、荒井東町内会、一般社団法人荒井タウンマネジメント、一般社団法人ReRoots、絵本と木のおもちゃ 横田や、おてんとさんの会、株式会社東日本放送、café Mozart、協同組合仙台卸商センター、郷土酒亭元祖炉ばた、公益財団法人仙台観光国際協会、せんだい演劇工房10-BOX、せんだい3.11メモリアル交流館、仙台市、仙台市交通局、仙台文学館、ちゃいるどらんど荒井保育園、特定非営利活動法人都市デザインワークス、FACTORY-K株式会社、みやぎ子どもの文化研究所、もろやファームキッチン、渡邊愼也(地域メディア史研究家)、渡邊博一