東北リサーチとアートセンター(TRAC)閉室のお知らせ
2021年03月31日 (更新:2021年3月31日)
2017年5月の開室以来、仙台・東北地域を現場に調査することや表現することの交差を軸に分野を超えて活動し、多くの人びとと交流してきたTRACは、2021年3月末日をもって、閉室することといたしました。
TRACが目指したのは、すでに世に流通する形式に沿ったアートや表現に触れる場をつくることではなく、東日本大震災の経験を経てあらためて「地域」や「歴史」にアプローチし、その切実な状況に触れ、立ち会うことによって新たな表現が立ち上がる、そんな「アートの現場」づくりでした。
これまでの活動では、100年前の七夕を知ることに始まり、昭和40年代の住宅地へと造成され変わりゆく仙台の何年にもおよぶ定点スケッチ、「戦争」「震災」「民話」という3つの出来事・物語の語り手の歩みをたどり聞き手の役割にせまり、障害のある作家たちの制作からその背景にある作家の動機、家族や介助者の共同作業、福祉制度など、表現活動そのものに通底する営為をひもときました。また、考古学者の野帳や東北の鉱山調査の展示、松島の国宝・瑞巌寺の埋木書院一日公開、仙台市内に残る防空壕の再調査・展示なども行い、その活動は実に多岐にわたりました。
これらは、運営団体「やわらかな土から」(一般社団法人NOOK、NPO法人エイブル・アート・ジャパン、3.11オモイデアーカイブ)による創意はもとより、日々の運営とネットワークによる賜であり、また伊達伸明氏ほかアーティストによる視点と技術に支えられて実現することができました。関係者含め、心より御礼申し上げます。今回、閉室とはなりますが、今後もTRACのコンセプトは引き継ぎ、ご来場いただいたみなさん、ご協力いただいたみなさん、3団体やアーティストのみなさんとのネットワークを活かした、あらたな展開へと駒を進められるよう、取り組んでいきたいと考えています。
今後ともどうぞ、せんだい・アート・ノード・プロジェクトをご注目ください。
せんだい・アート・ノード・プロジェクト
アーティスティック・ディレクター 甲斐賢治