【レポート】「アートは見るもの?アートと言葉をめぐる旅」
2025年10月05日 (更新:2025年10月6日)
7月26日「目の見えない白鳥さん、アートを見に行く」の上映会に際して、共同監督でもある作家の川内有緒さんとエイブル・アート・ジャパン東北事務局スタッフの高橋梨佳さんのトークイベントが開催された。
盲目の美術鑑賞家白鳥健一さんが美術館へアートを見に行き、彼に関わる人々や日常を見つめたドキュメンタリー映画で、会場のSARPにはたくさんの方々の参加があった。
映画の裏話や白鳥さんの人柄や彼の行動力など興味ふかい話が、高橋さんが聞き手となり川内さんが答えるという形で展開していった。
作品の見方が丁寧になった。白鳥さんとの鑑賞は言葉で説明をすることもあり時間がかかる。
当然展覧会でもそんなに多くの作品を見ることはできない。せいぜい数点。
そうすると一点いってんをじっくりと鑑賞することになり、今までイメージとして見ていたものが細部まで立ち現れるようになった、と川内さん。
高橋さんは、喫茶店で白鳥さんが話すシーンから始まり、ラストも喫茶店での会話で終わる。
そこで白鳥さんに「幸せとは何か」との質問を川内さんが投げかける。
「幸せとは時間の流れの中にあり、残すことができない」との答えが印象にのこった。
また、ある高校で白鳥さんのワークショップに川内さんが参加した際、終始無言でいる生徒に担当の教師が感想を求めようとしたが、白鳥さんは「そのままでいい、その子がいるだけで価値がある」と制した。川内さんはワークショップでは何かしらゴールを見つけようと奔走してしまうが、白鳥さんの特にまとめなくても良いという姿勢に、自分の中で価値観の転換があったと話した。
メディアテークで開催された、仙台での障害ある方々との取り組みの話しを通じて、川内さんから「美術館は可能性にみちている」という言葉も示唆に富むものだった。
交わされる言葉だけではなく、作品と見る人との空気感や空間などすべてが作品鑑賞。
美術館も、美術にまつわるものたちも可能性に満ちている。
お二人のお話に会場の参加者は引き込まれていき、和やかな時間が流れていた。
文章:喫茶frame 伊東卓
【開催情報】
日時:2025年7月26日(土) 16:30-18:00
話し手:川内 有緒 ノンフィクション作家
聞き手:髙橋 梨佳 障害者芸術活動支援センター@ 宮城(SOUP/NPO 法人エイブル・アート・ジャパン)
企画運営: 喫茶frame
主催 :せんだいメディアテーク(公益財団法人仙台市市民文化事業団)
協力: 映画「目の見えない白鳥さん、アートを見にいく」自主上映実行委員会
◉トークイベントの映像は、以下のYouTubeチャンネルにて公開予定です。