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【レポート】アートノード・ミーティング 11「8年目の健康診断 〜仙台のアート、人・場・動きをふりかえる〜」

2023年07月19日

2023年6月10日に、アートノード・ミーティング 11「8年目の健康診断 〜仙台のアート、人・場・動きをふりかえる〜」(以下、ミーティング)が開催されました。コロナ禍のなか、多くの人が集まって話し合う機会が少なくなっていたなか、久しぶりの公開会議となり、アートノードの目的や役割について改めて考えるとともに、メディアテークや仙台の文化芸術も含めて広く考える機会となりました。ここでは、ミーティング内容を振り返り、レポートします。

はじめに、今回のミーティングは下記のように開催されました。

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せんだいメディアテークが「優れたアーティストのユニークな視点と仕事」と、地域の「人材、資源、課題」をつなぎ、アートの現場の熱を高めることをうたい実施してきた「せんだい・アート・ノード・プロジェクト」(アートノード)が8年目を迎えました。その間、コロナ禍を経た社会状況は大きく変化し、アートをとりまく環境も少なからず影響を受けました。

今回「8年目の健康診断」と題し、狭義の「アート」という言葉にとどまらない文化活動に携わる仙台の様々な動きや、場所、人の動向を振り返りながら、仙台の文化的土壌のなかで、いかにしてダイナミズムを獲得していくのか、会場のみなさんとオープンに検討する「自由参加型公開会議」を開催します。

〈ファシリテーター〉
長内綾子(Survivart)

〈話題提供〉
甲斐賢治(せんだいメディアテーク アーティスティック・ディレクター)

〈プログラム〉
・はじめに

・第1部 アートノードとは?
アートノードのこれまでの事業紹介

・第2部 アンケートの実施について
アンケートについて解説

・第3部 アンケート結果を経ての今後について
参加者でディスカッション

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アートノードでは、これまでも事業について公開で参加者とともに考える機会をつくってきましたが、今回はアートノードが7年活動をしてきたことや、コロナ禍によって、仙台の文化芸術の状況も変化してきたことを踏まえ、これまでにアートノードにも関わってくださった関係者を中心にのべ100名の方にアンケートを実施しました。収集したアンケートについては、グラフ化できるデータについては配付資料とし、自由筆記(*1)については事前にKJ法に従い、一行見出しを抽出、はがき大のカードをつくり、会場の黒板型什器(考えるテーブル)に、その一部をグループ分けをして掲示をしました。(*2)

(*1)寄せられた自由筆記については、別途会場で掲示をした。

(*2)これらのアンケート詳細については、こちらのPDFをご覧ください。

本ミーティングは、これらのアンケートの結果を参考にしながら進むことになりました。

 

第1部でメディアテークの甲斐より、これまでのアートノードの活動について、事業紹介があった後、第2部でモデレーターの長内氏よりアンケートについて解説がありました。
そして第3部にて、参加者を交えての話し合いとなりました。

 

【アートノードの「アート」とは?】
まず始めに、言葉としてアートノードの「アート」とは何かの確認がありました。
アートノードでの「アート」は、いわゆる現代美術を対象としています。しかし、メディアテークは生涯学習施設であることから、いかに学びのデザインをするかが重要であるため、様々な興味関心、専門性をもつ方々と協働し、学びやアートの幅が広がることは、むしろ歓迎されることであることが、甲斐より話されました。

加えて、ワケあり雑がみ部の部長でアーティストの藤浩志氏より、「仙台をどうおもしろくしていくのか?」「仙台に何を欲している人がいるのか?」「その人たちがどういう活動をしていくことができる現場をつくるのか?」が大切であり、すでに出来上がっている文化芸術のフォーマットに満足できない人々や今の仕組みではアクティブに行動できない、という人たちとともに、どのような場を作っていけるのか、様々な方向性からたどっていくことがメディアテークの役割だとの指摘もあり、アートノードのアートは、様々な分野に横串を通すものだという認識を共有しました。

 

【人材育成としての役割】
ミーティングの中で、大きなトピックスとなったのは、人材育成に関することです。
まず、「アートノードは、仙台の文化関係者の生業につながるようにしようとする姿勢があることがよい」という意見がありました。
それに対して甲斐から、そのような姿勢を心がけているが、そうしたアートノードが人材育成として行っているコミュニケーション事業(TALK、MEETING、JOURNALなど)は数値化されにくく、評価されにくく予算やコロナ禍の影響で、思うようにできていないという運営側の困難が語られました。あわせて、長内氏よりご自身の経験を踏まえて、人材育成は数年やったら終わりというものではなく、常に新しい人材を育てていくことが豊かな人材を生むことにつながるのであり、例えば3年経ったので人材が育ったというような認識で考えるものでは本来ないはずだ、というお話しがありました。

 

【人材育成としての「公募」という手法】
そのようななか、「アートノードにはスクール形式の動きはないが、若い人が学校のような枠組みを通して、なにかにチャレンジしてみる機会があることで、その結果、まちが様々な経験をしていくのではないか。」と指摘がありました。この課題に対して、「公募」という手法の提案がありました。「公募」の良さは、仙台市内で実験ができる枠組みをつくることができるとともに、何か面白そうなことをやっているぞと思わせる広報にもなることです。また、美術大学がある地域でも、卒業後の発表の機会は少なく、そうした若手が挑戦する機会を仙台のような都市だからこそ作ることに意味があるという提案でした。
メディアテークもかつて公募展を行っていましたが、現在は終了しており、民間主導のせんだい21アンデパンダン展が現在行われています。200人近い人が参加する機会ですが、主催者曰く、作品の発表の場というより、楽しむ機会となっているようです。そうした動きとうまく役割を分担し、アーティストが育つ機会を育てることも大切であり、今の仙台にはそれが欠けおり、求められていることでもあると確認をしました。

 

【公共性と信頼性を最大限に活用すること】
また、「アートに関することを誰に相談したらよいのか分からないため、相談窓口があるとよい」という意見や、「クリエイティブな人々がプロジェクトや事業を具体的に行える環境を、アートノードないしメディアテークがつくることが大切だ」という意見や、「メディアテークという公共性・信頼性をアートノードも協働する側もうまく使うべきだ」という指摘もありました。
相談窓口という機能こそ、行政や公共施設が果たしやすい役割のひとつのはずですが、現在の仙台には充分機能している窓口があるとは言えません。そうしたレファレンス機能が求められる一方で、表だって見えるものではありませんが、SNSサービスを使うのにもハードルがあるように、規則や人員体制なども含め公共施設ゆえの身動きのしにくさというものは多々あります。アートノード(メディアテーク)としては、なかなか動けない分について、民間の自由闊達な動きに期待している部分があります。民間の活動者たちが、行政や公共施設のもつ公共性や信頼性というものを使い倒す気持ちで、協働する姿勢も必要であり、行政と民間が互いに理解をもって物事に取り組むことが重要であることを確認できました。

ただし、注意点として、アートへの理解にも幅があるため、アート=お金、集客といった理解は更新していく必要性があると、改めて会場から意見がありました。それを受けて、お金や集客といった視点だけでなく、好奇心や想像力、様々な生き方を大切だと考え、よい活動だからサポートしたいと思う人々が地域にいるのは確かであり、そうしたアートへの理解者を増やしていくためには、結局のところ学びの機会をいかにつくっていくかにかかっていることが長内氏より強調されました。

 

【情報とネットワークについて】
アンケートでも多くあった意見ですが「情報が行き届いていない」「ネットワークをひろげたい」「メディアテークスタッフ間での情報共有」という意見についても話題となりました。
そもそも機会を知らない、参加して良いのか分からない人がたくさんおり、障がいのある方々などは特にイベントなどに参加して良いのかどうかも分からないという話がありました。
また、100万都市にしては、イベントなどに関わる顔ぶれが似通っており、もっと様々な活動者たちがつながる必要がはあるはずだという指摘も受けつつ、ある程度同業種のネットワークはすでにあることを念頭に、ネットワークををつくることの目的として、新たな仲間が欲しいのか、仕事をしたいのか、情報共有なのか意識してつくっていく必要があるという声もありました。

アートノードの健康診断ではありましたが、メディアテーク、仙台の文化芸術のことについても話されたミーティングとなりました。
最後に長内氏が「20年を過ぎたメディアテークへの愛情も含めた期待を感じました」と締めてくださいましたが、運営スタッフもそれを実感しました。本ミーティングをやりっぱなしで終了することなく、今後何らかの形で事業に活かしていきたいと考えております。
引き続き、みなさまの声をお聞かせいただき、一緒に仙台のアートの現場をつくっていくことができればと思います。

最後に、アンケートにご協力いただいたみなさま、当日会場に足を運んで下さったみなさまに改めて感謝申し上げます。

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